黒金の戦姉妹 おまけ1発目 遠山キンジの受難
おまけ、というよりも設定の補足とか、端折った部分を少し細かく書いていく短編集、みたいなね。
今回は会話オンリーで状況説明なんかはありません。
ゆるーりと頭からっぽで読んじゃってください。
遠山キンジの受難
カナ、一体これはなんだ?俺には女物の服にしか見えないんだが。
あら、大丈夫よ。キンジの認識で間違ってないわ。
いや、ちょっと待ってくれよ、何も大丈夫じゃないし、俺は入学の準備をするって聞いてたんだが。
うん、大丈夫。そっちの認識も合ってるわ。
いやだから、この状況と俺の認識は一致しないんだ。何も大丈夫じゃない。女に慣れろって言われても服だけじゃおままごとも出来ないだろ?
その発想は近いわ、キンジ。おままごと、そうね…えいっ!
うおっ!?ま、まて!待ってくれカナ!そのカツラをどっから出した!
うふふ、私、弟君もいいけど妹ちゃんも欲しかったの。丁度いい機会だから見せて頂戴?心配いらないわ、キンジは地はカッコいいんだし、きっときれいに
何が丁度いいんだ!女装に丁度いい機会なんて聞いたことないぞ!そもそも、心配もしてないし、第一俺にそんな趣味はないって…
キンジ…男の子に、二言は無いんだよ?
一言もしてないって!
あら、そう。でもあなたは分かったっていったわ。
そんなわけ…
じゃあ種明かししよっか。キンジはローマ武偵中に入学することは同意したよね?
ああ、
うんうん、いい心がけ。でも、おかしいと思わない?
ん?おかしい?
どうして特務任務ってことになってると思う?
それは書類に目を通したが…確か、交換留学ではない他国の武偵を転校させるには、最低でもBランク以上の実力を持ち、相応の実績と信頼を提示する必要がある。だったか、俺はその時点で実績を提示できないから、普通の方法じゃ転校は出来なかったんだろ?それで兄…カナの特務任務に同行する形でイタリアに入国した。
ん、そうすると。キンジはただ任務でイタリアに来ただけで、武偵中に潜入する理由もない。キンジはそのままだとあの学校に通えない。
ああ、そこで何の魂胆があるんだか知らないが、お上が俺の為…というより将来有望なカナの為につくってくれたのが…
そう、この転校届。
そういえば無くさないようにってカナが保管してたんだったな。…見せてくれないか?
はい、どうぞ。すみずみまで読んで、
はいはい、言われなくてもちゃんと読むって…って、カナ、これ間違えて持ってきたんじゃないか?性別が女になってるぞ?名前も"Kuro Toyama"で苗字の綴りが一緒だから…
キンジ、転校条件の書かれた書類、まだ覚えてる?
覚えてるも何も、さっき言った通りだろ。
ここに写しがあるから、もう一回
……分かった。
…………やっぱりそうだ。Bランク以上の実績が必要ってのであってるぞ。
その先は?
えーっと、なになに、ただし以下の条件を満たす者はその限りではない。あー、ここも、確かに目を通したな。関係ないからさらっとだけど、貴族だの裏組織だのの人間は優先して交換留学出来るんだろ。あと、
ねえ
クロちゃん…?何言ってるんだ、カナ。ここには俺とカナの二人しかいない。そんな事より俺の転校届はどこに…
ほら、ここ見てクロちゃん。提出期限今日までになってる。転装生は正規の方法以外に特務任務でも潜入できる。でもそれは国同士の秘密の遣り取り。バレたら…ね?だから
カナ、何でこっちを見てるんだ?いやだ、認めないぞ。俺は
キンジ、神妙になさい。男に二言は無いの。あなたは転装生という条件を飲んでこの国に来たの。
いやだ…
私との約束、キンジならもちろん守ってくれるよね?
いやだ……
逃げ場はないの。観念して私と……証明写真を撮りに行きましょう?
い、いやだーーーーーーーー!!
おまけ一発目、読んでいただきありがとうございました。
うーん、酷い。もはや何者かの陰謀を感じますね。犯人は私なんですが。
でも武偵ははめられた方が間抜けらしいので、クロさんとキンジさんには頑張っていただきたいものです。