黒金の戦姉妹13話 深賚の星座(前半)
冷やし麦茶、始めました。熱中症には気を付けましょう。パソコンもスマホもオーバーヒートしますから、やさしくしましょうね!
トロヤが現れて、てんやわんや。
クロの作戦はうまくいくのでしょうか?というところでしたね。
今回も重要単語ましましで行きますので、どうかあくびを我慢してご覧くださいなっ!
では、始まります!
ローマ武偵高付属中、歴史の教科書の一冊
「歴史に刻まれた大悪の魔女、魔導士史記」より抜粋
主観を含めて読み上げる。
悪魔に魅入られた
偉大なる公爵ミルチャ老公の孫であり、ドラゴン騎士団に叙任されたヴラド・
彼が実際に公位に着いたのは僅かな期間であったが、
しかし、彼には謎が多く残されており、戦いの記録があまり残されていない。
教科書には一説として、その偏執性が挙げられていた。
彼は積極的に処刑を行う事は無く、戦場においてさえ殺す相手を選んでいて、それ以外の人間を殺すことはなかったという。
邪魔をしたものはその限りではないが。
英雄の卵とでも言えそうな者や、妖しい力を持つ者のみに異常な執着心を示し、力に依ってねじ伏せ、止めを刺すとそのまま死体を持ち帰っていた。
全身を日の光さえ通さない鎧で覆い、顔すらも見えない程に重装備だったのも影響し、敵味方問わず
遺体を棺桶に納めるその姿は、死を悼むようなものであったが、周囲からは死体コレクターと恐れられていた――――とのことだ。
……図書館の本なら、そんなのただの怪談話でしょ?で済むだろう。
だが、自軍からの信頼もあり、大きな後ろ盾も得ていた彼にも終わりの時が来る。
敵国の攻撃により敗走し、捕らえられてしまった。その中にはヴァチカンの師団が紛れていて、この人物の報告した内容が歴史として教科書に載っているのだ。
連行された先、かつてワラキア王国の首都であったタルゴヴィシュテには、彼の娘とされている
烙印は押されてしまったのだ。ミルチャⅡ世とトロヤは魔女である、と。
彼らにはそれぞれ、渾名が付けられた。
それから間もなく、
銅合金の銀を全ての魔臓に突き立てられ、棺桶を用意されることすらなく、悶えたまま地面の穴へと投げ込まれる。
続けてトロヤも、同じように全ての魔臓を突き刺され、悲鳴を上げることも出来ずに父親と同じ場所へと堕とされる。
生き埋め。
超人的な力を失った2つの命は、このまま息絶え、永遠に土に還る――
――そのはずだったのだ。
夜の闇が支配していた世界が眩く照らされる。
昂ぶりの炎が地上を燃やし、拒絶の心が上空を凍てつかせ、その中心で空間が挟み込まれるように圧し潰される様は、圧壊する歪んだ心を思わせた。
あの異常な興奮を得られなければ、心は凍り付いてしまうのだろう。
だから彼女は他者の恐怖を求める。心を悦ばせる別の方法を知らないから。
そうしてまた、孤独に近づいて、心の歪みは際限なく大きくなっていくというのに……
「トロヤ、ですね。覚えました、もう忘れませんよ」
引き攣りそうな顔を無理やり整え、自分は対等な立場であることを、彼女と自分自身に理解させる。
ここでビクビクしていれば、彼女の興奮を高めることは出来るだろうが、根本的な解決には至らない。
たとえ偽りであっても友として、周囲を拒絶する彼女の心を、内側から切り崩していくしかないのだ。
トロヤは闇の翼をパタパタとはためかせ、私の次の言葉を待つ。
気紛れで災害を起こすような悪魔が、たった1人の人間の名前をそわそわと、その肌の色と同じ汚れを知らぬ無垢な表情で待ちかねている。
「トロヤはヒルダの従姉、お姉さんで間違いありませんね」
「……え?ええ、そうよ」
「彼女を助けに来たんですか?」
「その必要は無いのでしょう?前もって聞いていたもの、ヒルダは人間に討たれ人間に救われる、なんて馬鹿げた話を。でも、本当だったみたいね」
(過去に誰かから聞いていた?この事件の顛末を、ヒルダが一菜を庇って撃たれることすら予言していたとでも?)
求めていた言葉が得られなかった事で焦れているのだろう、彼女は翼を一層強く揺らし、キョロキョロと視線を逸らし始める。
しかし、プライドが感情に勝っているのか、2度目の問い掛けは無い。その仕草に高貴さは見られないが。
(これは……まさか、あいつは……チョロいかもしれない!)
先程の話は謎の残る発言なものの、有力な情報になりうる。
少しどころではなく危険だが、彼女の話を聞き出せれば大きな戦果を獲得出来るかもしれない。
――ちょっとだけ、試してみる。
「では、なぜここまで来ていたんですか?1人で来るには寂しい場所ですよ」
「あらまぁ、そう、そうなのね。そんなに気になるのなら教えてあげてもいいわよ?」
自分に興味を持たれるのがそれだけで嬉しいのか、顔を軽く朱に染めて表情も緩め、こちらに歩いて来る。
衝動的に逃げだしそうな自分を奮い立たせ、目は合わせないが、怯えは見せず、彼女を待ち受けて一歩も引かない。
顔が真横に来て、頬と頬が触れ合う距離で彼女の冷気が私を捕らえた。
「――これは2人だけの秘密。裏切ったら……ねぇ?」
「うっ……」
ここまで歩いて来る間に、人が変わったと疑いたくなるほど強烈な殺気が纏われている。
目は合わせていないのに、あらゆる者を従わせるその唇から紡がれる声が、心さえも凍えさせるその肌から放たれる冷気が。
体をその場に縛り付ける。深く深く、地下深く、狭い穴の底に突き落とされたように、身動きがとれない。
(さすがに舐めてたかな。失敗した……かも?)
どうせ抵抗も出来ないのだ、
『……
周囲には一切聞こえていないだろう。彼女の声は空気の伝播を完全に無視して、直接私の脳へと響かされた。
超音波。
幾重にも並び、大きさも速度も異なる複数の波が、私の中で合成し、打ち消し合い、理解できる音の波長となって痛い位に響いている。
『どちらもいい感じに育ってきているわ。点同士は互いが近ければ近い程、成熟が早くなるの。
(分岐点と異常点?)
『あなたが一生懸命に支えているのはたった1つに過ぎないの。それもとても小さな、小さな余波』
「どういう――」
『声を出さないで?あなたが死んでしまったら、後々が面倒になるの』
「……」
言われるがままなのは悔しいが、何もできないからには従うしかない。
それに、今の話が嘘でないなら、私はこの情報を持ち帰ることが出来る。
誰かに話すことは禁じられたが、知っていれば対処できることもあるだろう。
『遠くない未来、奔流が来るの。素敵でしょう?私の
「……!」
思わず目線は上に行く。空から地上を睥睨し、彼女の感情次第ではすぐにでも一帯を焼き払う圧力の塊。それを目じゃないとまで言える奔流とは、物理的な物では無いのだろう。言葉の通り歴史の改革、転換期の始まりを指していると考えられる。
頭にキンキン響く声色から察するに、心から陶酔している感じも見られ、宗教の信仰のように、理想とする何かがそこにはあるのかもしれない。
『波のスタート地点になるのが分岐点の仕事で、波の障害物にヒビを入れるのが異常点の仕事。でも彼らは不安定な存在だから、
今までの話の流れから、点と呼んでいるものは特定の人物もしくは団体を指していると考えられる。
要はその人間たちが自分たちの意向通りに動くように監視し、必要に応じて刺激を与えて来たのだ。
奔流も自然に起こるものではないと推測できる。
加えて話の全てを鵜呑みにするなら、預言者と呼ばれる類の能力者かもしれない。
その人物が波を立てる。とても遠くから、徐々に勢いを増して、世界のあらゆる箇所で歴史の改変が行われていく。
(彼女達はその準備をしているんだ)
『……でも、そう、そうなの。育ち方が、ちょっと、ちょっとだけ遅いのよ?誰かが邪魔をしているわ』
トロヤはそこまで言って……顔を離した。
体に熱が戻り、動きを取り戻す。固まっていた間は、まるで夢を見ているような気分だった。
「どうだったのかしら、私のプレゼントは気に入って貰えた?あなたがイジワルだから、つい意地になってしまったの」
「ええ……、最高のプレゼントですよ」
やっとこの状況を理解し始めた。
ヴィオラが私に接近した理由。一菜が狙われ、私と一緒にここにいる理由。彼女が監視を止めてここに姿を現した理由。
友達なんかじゃない。彼女はそんなことを望んでいない。
彼女が望むのは――――
「私は……」
「あなたを同志として迎え入れるには少し早かったわ。
トロヤは笑っていない。今まで見せていた狂気は鳴りを潜め、無機質で怜悧な雰囲気を呈した。
心なしか、感情は希薄に、殺気や威圧感も和らいでいる。
その顔は、教科書に載っていた絵の面影を感じる、儚い印象を与える表情と光沢のある銀の双眸。
左目には逆五芒星の紋章が見られ、異質なものであるのに、そこにあるのが当然だと思えてしまう、不気味な特徴だ。
(これが死ぬ前のトロヤ・
「……だから私の手元に置いておくの、逃げられないように、もう一度あなたを生き埋めにしてあげる」
炎は勢いを削がれ、同時に冷気さえもその力を弱めると、川は本来の流れを取り戻す。
夜の闇が勢いを増し、再び世界を支配し始めた。
「その方が育てやすいわ」
「私は……点なの?」
(トロヤは初めて会った時から、私の事を知っていたんだ。そして見事に私を捕らえた。でもそれはカナとメーヤさんのおかげで阻まれた)
あの任務に私がいたのは偶然。……でも誰かが仕組んでいればそれも必然。
手口は今回と一緒。
その人物と親しい者を含めた複数人で組ませ、事件と称して移動させた。人数もあの日と同じ3人。
そしてメーヤの対魔性能は高く、カナの戦闘能力は私よりも遥かに高い。あの中で、私は守られる存在だった。
置き換えてみる。
普段の私と一菜の戦闘力は変わらないが、一度トロヤと会ったことがある私にはアドバンテージがあると考え、チュラを最も私と相性の良い相手として付けた上で、相当な実力を持つフラヴィアと狙撃手を予備戦力で遠方に配備した。
つまり、一菜はこの中で守られる存在。私は彼女を守らなくてはいけなかった。
(共通点があるんだ、あの夜と。前回は怪盗の名を騙り、本性は魔女であるという情報を流し……私たちの知らない所で誰かの作戦は成功していた)
ますます、
一体どの時点から私達を守り始めていたんだ?
「――寂しいわ、あなたの口から聞きたかった……お名前」
「……ッ!」
ゾワッと全身が総毛立つ。
見た目と相応な少女の声には、明らかな拒絶の響きが含まれていて、対等な立場を放棄する意思を伝えてきた。
(あれこれ考えるのは後にしよう。1人で考え込んでる場合じゃないな)
彼女の要求はとても呑めるものではないし、
「ゲームをするのよね?いいわよ、最後に目一杯、自由に遊びましょう。良い物が見られるかもしれないし」
「……はい」
(負けることは許されない。考えろ、私があの子に選ばれた理由を。私が勝てる戦いは何か――)
背中の汗が止まらない。銀の両眼に見つめられるだけで、衰弱していく気さえした。
おかげで思考が纏まらず、時間だけが過ぎていく。0.1秒、0.2秒……
(――ダメだな。何も思い浮かばないや)
それならそれで、やることは決まってる。いつもの事だ。
(行き当たりばったり。あとは、その時に何とかしてみせる!)
最終的に考えは
「トロヤ、私たちが初めて出会った日を覚えていますか?」
「ええ、もちろん。見事なまでに失敗したもの。私、嫌いだわ、あの女」
「カナのことですか?」
「違うわ。私、トオヤマカナは好きよ?彼女、とっても綺麗だもの。もう少しで2人まとめて、私の物に出来たのに……」
(メーヤさんの事か、言われてみれば然も有りなん、その通りですね)
実際に戦闘風景を見たわけではないが、大剣をブンブン振り回す、荒々し……凛々しく、恐ろ……麗しい聖女様の姿が思い浮かぶ。
まあいい、話を続けよう。
「ゲームの内容ですが、あの日の続きをしましょうか」
「続き?」
全く手が出なかったのも悔しいし、やられっぱなしは家訓に反するのでね。付き合ってもらいます!
「
「懐かしいわね。捕まえたら私の物になってくれるの?」
「約束は守ります。ですが、ルールを破った時点で負けになりますので」
「聞かせてくれる?あなたのルールを」
「では――」
ルールは以下の通り、
・ゲームの初めに互いの要求を宣告すること。交渉の余地はあるが、変更は両者合わせて3度まで。宣誓のやり直しか、代替案の提案が可能となる。
・ゲーム時間は
・ゲーム開始は逃走側が移動開始した1分後、1回捕まるごとに1分のロスタイムを設け、再び逃走側が移動する。その1分間、追跡側は動いてはいけない。
・装備品、魔法の使用を認める。ただし、いかなる状況であっても、建物や人間等への過度な攻撃や殺人は許可しない。
・確保は体の一部が接触することを条件とし、武器や銃弾、魔法等による間接的な接触は認めない。ただし逃走側の衣服及び付属する装飾品越しは認めるものとする。
「こんな感じでしょうか。異論はありますか?」
「……そんなルールでいいのかしら。5分でも構わないし、魔法を封じてもいいのよ?」
トロヤは平等なルールに対し、むしろ不満があるようで、斜を向いて腕を組んでいるが――
「正々堂々!そうでなければリベンジの意味がありませんから」
これは嘘だ。このルールは私に有利になっている。
騙すのは卑怯かもしれないが、勝てば官軍、文句は言わせない。言うとも思えないが。
「…………ふっ……ふふっ。面白いのね、あなた。いいわよ、その条件で遊んであげる」
(乗ってきましたね?その余裕も今の内だけですよ)
トロヤは先程と打って変わって機嫌が良くなったようだ。私が対等な立場になろうとすることがそんなに嬉しいのか。
……罪悪感で世界は平和にならない。ここは我慢だ。
「じゃあ、宣誓からかしら?」
「その前に、少しお待ちください」
当初の予定とは変わったものの、用意した舞台は私の力になってくれそうだ。
武偵憲章7条、悲観論で備え、楽観論で行動せよ。
作戦を放棄しておいて今更だが、準備は念入りに、確実に。
後ろに振り返り、彼女たちの様子を確認する。
多少ボーっとはしているが、心ここにあらずって程もひどくなさそうだ。
「一菜、すぐにヒルダの納棺と
「……ふぇ??う、うん、分かったよ」
(こっちは動きそうだな)
「アリーシャ、一菜を手伝って……アリーシャ?」
「……」
どうしたんだ?意識はハッキリしているし、声に反応して頭は振っている。
右目は私の視線に合わせていて、肌の色も悪くない。
左目を抑えているが、火の粉が目に入ってしまったのだろうか?
「アリーシャ!」
「……すぐにご用意いたしますわ」
何事もなかったように一菜と共に台座の方へ歩いていく。
左目を抑えていた手も下ろし、立体視も出来ていて、足取りは問題なさそうだ。
(気にし過ぎか?んーと、ライトは青、もうちょっとだけ時間を稼がないと)
礼拝堂の入り口に置かれた進行時間計の虹色ライトを確認すると、紫まであと15分。何か良い話題無いかな。
「
アリーシャの箱からチュラの声が聞こえ、城内のトラッ……絡繰の仕事が終わったことが報告される。
随分手早いが、さすがに3人は割り当て過ぎたか。
それなら2人は隠密の仕事に、チュラはシスターの隊長さんとお話しをする流れだ。
屋上以外は順調だなぁ。
少し早いが始めてしまおうか、リベンジゲームを。
「トロヤ、始めましょうか」
「いいわよ。私の要求は……」
「いえ、私が宣誓のお手本を見せましょう」
「?何かしら、お手本って」
トロヤは首を傾げているが、特に訝しむ様子はない。あらまぁ、交渉は私の勝ちですか?
世界がどうこう言う割には、世間知らずなんですね。
「では、宣誓させていただきます。私の要求は……
空を指さして、そう宣言する。ローマを守るためにこれは外せないだろう。
「それだけでいいの?気になっているのでしょう、私の話の続き。それに、たとえ負けたとしても、またあなたに会いに行くわよ?」
至極真っ当なご意見、ありがとうございます。
確かにそうだ、今回負けたからと彼女が諦める理由にはならない。そして次は何の準備もない私は負ける。ここで要求に不可侵を追加すべきだろう。
「……やり直してもいいですか?」
「…………ふふっ、あなたって抜けているのね。いいわよ、改めて望む要求をしなさい」
助かった。許可も頂いたし、
「ではでは、宣誓させていただきます。私の要求は……現地点から半径5kmまでの
今度は手を大きく横に広げ、広範囲であることを表現するが……
「あら、考えたわね。確かにその要求なら、色々とやり辛くなる。あなたの首の紋章も消せ、と」
「はい、フラヴィアの紋章も一緒に消してもらいますよ」
「フラヴィア?……ああ、その子の事ね、いいわよ。どうせもう逃げてしまった抜け殻だし」
真意はすぐに見抜かれてしまったけど、仕方ない。
フラヴィアにはピンと来ていない様子だったが、初対面だったのか?
まあいい、紋章を刻まれたときは私も動けなくなったし、苦しんでいるところだろう。
「さぁ、あなたの番ですよ」
「言わなくても分かるでしょう?」
「だめです!宣誓をしなければルール違反ですよ」
「……しょうがないわね」
ちょっと恥ずかしそう。分かる、やれって言われると途端に恥ずかしくなるよね。
「宣誓するわ。私の要求はトオヤマクロ、あなたの全てを私に捧げてもらう事よ。身も、心も、魂も」
私に向かって両腕を差し伸べ、おいで、と促してくる。彼女があまりに魅力的だから、つい、手を取ってしまいそうになる。
いけない、これは罠ですわ!なんてずるいのかしら!
その要求は読めていたし、それしかないとまで言える。
(だよね、知ってる。でもそれで終わりじゃ困るな)
「それだけでいいんですか?彼女、一菜もあなたたちの目的なんでしょう?それにヒルダだって、負けたら無事に返すとは一言も言っていません」
だから挑発をする。ここが勝負所であり、妥協は許されない。
「??そんな安い挑発に、何の意味があるのかしら」
頭にハテナマークを大量に浮かべているが、簡単には乗ってこない、さすがにあからさま過ぎて警戒している。
こちらを睨んで、考えを読もうとしているが、推理は得意じゃないみたいだ。
(好きなだけ疑うがいいさ。どうせ、断らせる気は無い)
「……あなたたちの邪魔をしている存在を知っているとしたら?」
「――ッ!」
トロヤが初めて驚愕に目を見開いた。羽はピンと張って、力んでいるのだろう羽ばたくことを忘れている。
(……これは思った以上の効果だな)
トロヤの目は鋭く細められたものの、羽は緊張で動かさないまま。
「本当に見た事があるのね?彼女の
濃密な殺気が一直線に殺到するが、ここは耐える。耐えて弱みを見せない。
「本体、という表現には疑問がありますが、心当たりはあります」
「これまでに枝の先にぶら下がった紛い物なら、いくらでも見て来たわ。彼女は外には出ない。いえ、出られない。過去に脱走した姿が目撃され、記録にあるのは12回。1回を除き、残りはいずれも自身の盟友へコンタクトを取る為のもの。直近では、日本人男性への接触が報告されたわ。ここローマでね」
日本人男性ってのは例の戦兄とやらだろう。
なるほど、特殊な環境で育ってるみたいだね、そりゃ性格も捻じ曲がるよ。サドだし。
幽閉、監禁。そんな感じなのか。
(12回も脱走出来てるなら、もうそれ自由じゃないの?)
「あなたは盟友?それとも操り人形なのかしら?」
「それは……」
正直分からない。利用されているだけの可能性もあるが、そうは思いたくない。
でも……どうなんだろう。
「とても高度な人心掌握術ね。気を付けなさい?あなたのそれは信頼ではなく、依存よ。彼女の手駒は決して裏切らない」
ヴィオラは自分の秘密を、今回の本当の目的を話してくれた。
――――それも、一菜を守るための隠れ蓑だった?
謎が疑問に、疑いが不信に。
でも、きっと彼女はまた、全てを教えてはくれない。
謎を残したまま、私に信頼の余地を与えない。
トロヤの意見と食い違っている。
彼女が信じられない私は、盟友どころか、操り人形ですらない?ただの監視対象なの?
「悪いけれど、宣誓をやり直させてもらうわね。迂闊だったわ、あなたの前には直接現れると思っていたのに、先を越されていたなんて」
遠くの方から声が聞こえる。そうか、トロヤは交渉を使うか。そうか……
(ヴィオラ……私はあなたを信じたい。……ううん、信じるって決めた!盲信なんて言われようと、あの子は大切な私の戦妹だッ!)
無言で頷き、トロヤの宣誓の変更を認める。
いいんだ、これで作戦通りなんだから。
「宣誓するわ。私の要求はトオヤマクロ、あなたの全てと……ミウライチナ、それとフォンターナの次女、あなたも来なさい。目を付けられている…いえ、あなたも、もう手遅れかしら」
一菜はビクッとしたが、アリーシャは驚いていないように見える。どうやら自分が選ばれるこの展開が予想出来ていたらしい。
とりあえず、これでトロヤの宣誓は確定だ。私は取り消すように交渉することは可能だが、必要ない。
アリーシャが要求されたのは意外だったが、こちらは負けた時点で全滅なのだ。トロヤの要求など聞くだけ聞くよ、というもの。
「トロヤ、あなたが要求を増やすのであれば、私にも考えがあります。宣誓をやり直したいのですが……それとも、あなたの要求を変更する方を望みますか?」
「…………」
彼女は、しまった!と思ったかもしれないが、遅すぎる。前哨戦は無事に勝利を勝ち取った。
「……いいわよ、もう1度やり直すといいわ」
「あなたが公平な方で助かりました」
相手が望む要求を最大まで引き出してから天秤に載せ、反対側には同じ重さまでの要求を積み重ねられる。
そして交渉はこれで
もうトロヤは拒否できない。
交渉の余地?そんなの交渉回数が奇数の時点で成り立っていない。こんなルール、初めから不公平だ。
ライトはほとんど紫色に変わり、あと10秒を切ったところ。
さっさと要求を宣誓して逃げるとしよう。
「では、最後の宣誓をします」
トロヤは本気で来るだろう。ヴィオラの話を出してから、彼女は焦っている。なんとしても手中に収めるつもりだ。
だからこその過度な攻撃と殺人の不許可だが、あの様子だと腕の一振りで吹っ飛ばされかねないな。
「先程の要求に加え、あなたの過去について話していただきます。その上で――」
「……?」
トロヤは終始首を曲げっぱなしで、背骨が曲がってしまうんじゃないかと心配になる。
(ふふふ……分からないでしょう?だって最初から……)
「お友達になって下さい!」
「――!?」
(こっちには勝利以上の要求なんてないんですよッ!)
ボッフウゥゥウウウウウ!!
突然の大爆発!……ではなく、超巨大煙幕!
なるほど、忍のステージエフェクトは良く考えている。これなら私が
トロヤ確実に怯んでいた。
予想できなかっただろう、まさか私が一菜とアリーシャの交換条件に昔話と友情を要求するなんて。
その隙を作り出すのが肝心要、勝利より重いものなど無いんですよ――
――でも。いつか、本当に分かり合えたらいいな。
「一菜ッ!」
「準備おーけー!」
「アリーシャ!
「はい!存じ上げておりますわ!」
2人はここ一番で立ち直ってくれている。心強いね、ホントにさ。
私のお友達宣誓に笑ってくれてるよ。
「一菜、
「よっしゃー!うっっるぁぁあああーーーー!!」
バギンッ!
一菜の殴打によって、地面に刺さっていた
私が乗り込んだその
「うわはははぁぁああーーーッ!」
「いってらっしゃーいッ!」
「お気をつけてー!」
ギュンッ!と加速して、サンタンジェロ城の外に吹っ飛ばされる。
ワインダーなんてないから、一菜(馬)力で巻いてもらっていた。
ガイア、クラーラ、パオラの3人が待機している川の向こう岸へ、そこで車が待っている。
私はこれからローマ市内を高速で駆け巡る。
地獄のかくれおにの始まりだ。
途中途中で重心を変えて向きを調整し、距離150m弱を、木箱に乗ったままあっという間に飛びきって……
「……ん?うおッ!あれ、クロが乗ってねーか!?」
「何言ってるんですか、ガイア。私たちは川に落ちた木箱を……ッ!?」
「2人共、どうしたんです?クロさんから電話で、作戦が早まったとは聞きま……し……えっ?」
「――――た、たっけてぇーーーーッ!」
(い、一菜のバカ!バカぢから!バカバカ村のチャンピオン!バカみたいに巻き過ぎーーー!)
川に着水するつもりが、飛び越えて、道路の木々に衝突するルートだ。
(ゲーム開始直後からリタイアしてたまるかっ!)
木箱の勢いは落ちない。
自然破壊は良くないぞ、だが……やむを得まいよ。
(お婆様直伝(被検体:お爺様)!秋水で……って、この箱どうするよ!?破片が道路に吹っ飛んでくよ!?……じゃない、違う違う!ヒルダが入ってるんだよ!?)
パニックになり過ぎて、この箱が棺であることすら忘れていた。
いくら死なないからって、後遺症は残るかもしれない。なにせ謎の多い能力だ。
この吹っ飛んでる速度をどうにかしつつ、棺の中のヒルダを取り出しつつ、棺の破片が向こうに飛んでいかないようにする。
やることが多い、どうしよう。
こんなときにシチリア島を思い出してしまった。あの時も必死にしがみついてたな。
今しがみついてるのは棺だけどさ、シャレにならないよ。
えーっと、1つずつ切り捨てるか。
じゃあヒルダから……は、後が怖いので、向こうに人がいないワンチャン……も、いたらその時点で反則負けになっちゃうし、速度……私が棺を受け止めるの?無理無理、絶対!衝撃を体の一点で受けたら大怪我だよ。
吸血鬼みたいに魔臓が4つあったらなぁ……1つでも残ってれば再生……4つ?
それ以上にあるじゃん!私にも5つ――4本の手足と切り札が!
(閃いてしまったからには、やってやりますよ!)
頭の中でシミュレーションをしてみて60%程は決まった。
残りはその時に考える!
棺にしがみついた状態から、右手を前に突き出し、左手を棺の前側の角に掛けて、両膝を曲げたまま、棺の後ろ端ギリギリまで下がる……
(今だッ!思いっきり引っ張れッ!)
左手で体を前方に引っ張るように、棺の勢いを少し奪って前に飛び、更に離れる瞬間に両膝を思い切り伸ばして、両足で棺の前端を下向きに叩き付けて縦回転させる。
(離棺成功!続けて着木準備!)
突き出した右手が木に当たる、このまま衝撃を受ければ重症だろう。
(この右腕を指先まで使って、いつも高速移動している逆の要領で各所を曲げながら引いて衝撃吸収。ただし全て吸収せず、敢えて軸をズラして、腕全体で全エネルギーの2割を消耗させる!)
だいたい衝撃の2割を右腕にもらいながら、その反動と軸のズレで体が右向きに回転する。
目の前には後続者である、縦向きの棺が迫って来て押し潰されそうだが、残りの衝撃はぶつけない。8割の衝撃ともなれば結構な破壊力になるだろうし、何より私も痛い。
(体をねじって、左足でッ!)
棺の蓋を蹴り開けると、中には目を閉じたままのヒルダがいるが、当然なことに眠ったように動かない。なので、続けて追随する左上半身でヒルダを棺から奪うように抱きとめる。
2人して再度、木箱に納棺されるが……
(棺はもう用済みですッ!)
1周して戻ってきた下半身、右足で棺を川の方へ蹴り飛ばす。今の2つの動作でエネルギーの2割を消耗させた。
(後は残り6割ある衝撃のエネルギーを、次の木にぶつかる時に分割して発散させるだけ)
勢いは落ちつつも、次の木はもう目の前だ。
(まさか、遠山家のあんな訓練が役に立つとは……)
――五点接地着地。
日本の自衛隊などでも訓練するらしいが、小学生の内に屋上から投げ飛ばされた経験のある仲間はそうそう会えないだろう。
最初に足のつま先に4分の1の衝撃を掛け、そのまま体を丸めて地面に転がりながら脹脛の外側、太腿の外側、背面、肩の順に着地してエネルギーを分散、最後に残ったエネルギーを腕にのせて発散させ、即座に立ち上がる。
簡単に思えるが、意外と体を痛める上に、1人では失敗の原因にも気付きにくい。
遠山家では着地後の動作の形が似ている事と、位置エネルギーを運動エネルギーに変換する攻防一体な性質から、「勾玉」と呼ばれ、「絶牢」の亜種とされている。
なんと!過去には高さ10mから飛び降り、そのエネルギーを全て掌底にのせて城壁に穴を穿った猛者もいたらしい。
飛び移った方が早くないの?それって。結構高かったのかな?それとも距離の問題?
だが私が叩き付けられるのは水平な地面ではなく、柱状の木。
ベクトルは垂直ではなく水平で、両腕にはヒルダが収まっている。
(見付かるつもりはないけど、万が一、トロヤに接近された時に負傷しているのはマズいし、確実に決める!)
両足の爪先を先に木に到達させ、膝を折っていくことで受ける衝撃を2割までに抑える。
そして普通はここから、柔道の回転受け身のようにエネルギーを立ち上がる勢いに変換していくが、それにはヒルダが邪魔になる。
(訓練で何度も打ったんです。怖くもなんともないですよ!遠山家の切り札は……)
膝が付く、そのタイミングと同時に――
(これですからッ!)
秋水を利用し、体重のほとんどを頭にのせて、額を木に叩き付けた。
メギィッ……という音を立てて、頭が少しだけ木に刺さった状態で止まる。
残り4割のエネルギーは見事に切り札と両膝で受け切ったようだ。
3点接柱着地。
両脚、両膝、額だけで着地できた!
自然は力強いから大丈夫だろうけど、ごめんね?
今度、一菜とかいうおバカの大将連れて来て謝罪させるから。
それはさておき、木にめり込んでいる今の私の体勢を真横から見たら、正しく勾玉型だろう。すごく恥ずかしい。
(ぬ、抜けない……)
「んん~~~!!がぅッ!」
バタついていたらスポっと抜けた。
木に空いた洞はキツツキならぬキドツキの仕業だと広まる事だろうね。
「っと、っといやぁッ!」
(あ、あぶなッ!ヒルダ落とすところだった!)
また忘れていた。
抱いている事も忘れて取り落とし、すんでのところで受け止める。
一呼吸置いて頬の赤味が引けば、今度は頭の痛みが襲ってくる。
ぐわんぐわんと揺れる脳は大きなダメージを受けていそうだ。
「危なかったですが、ヒルダが無事で何よりです」
(起きてからいちゃもん付けられたら、たまったもんじゃないですし)
傷は増えてないか?特に顔!……あー、飛ぶ前の傷とか覚えてないな。
それでも一応、改めて眺めてみる。
「羨ましいくらい綺麗な人だよ」
襲われた時も綺麗だとは感じていたが、間近でじっくり観察すると、また違った彼女を見ることが出来た。役得役得。
(真っ黒な服装はともかく、黙ってればお姫様みたい。んー?みたいじゃなくて、トロヤの従妹なら彼女も貴族様の娘かも)
それなら尚更、彼女がこんなところにいる訳が分からない。執事の吸血鬼とか下僕とかいないのか。吸血鬼同士には階級制度が無いとか?
諸々気になる。
彼女たちの価値観は私達と異なるのだろうけど、やっぱりトロヤとヒルダは……
「仲良し、かぁ。もっと知りたいし、ゆっくりお話しもしてみたい」
その為にも負けられない。
ゲームに勝って、トロヤから過去の話について聞くんだ。
「おーい!クロー!無事かー!?」
木々の向こうから声が聞こえる。ガイアが探しに来てくれたみたいだし、さっさとここからずらかりますか。
「ガイア、双眼鏡を貸してください」
「あ、おいっ!木箱だけ帰ってくるからビビったぞ?」
「あ、あはは……すみません。アレの回収もお願いしますね」
「ったく、双眼鏡ならクラーラが持ってるぞ。たまに現場に来ると。いつもはしゃいでんだよ、あいつ」
「それは良く知っています。彼女は視るのが上手いですからね」
ガイアに木箱の回収を任せ、指示されたポイントの車へと移動する。
彼女は私が抱いていたヒルダに関して、説明は求めなかった。別れ際に「しっかり守れよ」とだけ言われたけど。
バチカン絡みなのは伝えていたし、勘付いたかも。
教皇庁図書館の向かい、川との境界線を敷く木々の中、そこに停めてある車の脇ではクラーラがサンタンジェロ城の屋上を双眼鏡で覗いており、パオラが通信車輛であるトヨタバンのディーゼルエンジンを温めていた。
パオラは私が血まみれのヒルダを運んでいるのに驚いていたが、後部座席の扉を開けて招き入れてくれた。
「クロさん……無事なのは良かったんですが……これはまた、すごいことをしてるんですね」
「いつもの事です。この女性を
「構いません、けど、この綺麗な人、
「間違いなく」
「そ、そうですか」
ちょっと引いてる。仕方ない、色々穴だらけだしね、服とか体とか。
荷台に常備されている布団に横たわらせ、車を降りてクラーラから双眼鏡を借りに行く。
「クラーラ、屋上の状況は?」
「……」
「クラーラ?あ、クラーラ、ヘッドホン付けるの忘れてますよ」
彼女の首に掛かっていたヘッドホンを持ち上げて耳に当てる。
「あれ?クロさんいつの間に。やっぱり怪我の1つもありませんね」
「やっぱり、を驚きました、に変えてください。クラーラ、双眼鏡を借りてもいいですか?」
「え、今ですか?今いい所なんですよ?」
「じゃあ実況をお願いします。いい所といってもまだ煙が晴れていないでしょう?」
心配してくれていなかったので、八つ当たり気味に尋ねてみる。何が見えてるんだ?
クラーラは屋上よりももっと右側、最高裁の上を見ている。そこには確か……
「狙撃手に動きがあるんですか?」
「うーん、視界の端がモヤモヤしてて、その予兆は感じますが……あっ!そろそろ撃ちますよ。指を何度も反復させて、何か呟いています」
おまじないか何かだろう。
初心者によく見られるものだが、極めたプロもまた、初心に還る。ここ一番で真価を発揮する…って聞いて、決め台詞は理に適ってるんだな~とか考えてた記憶がある。
―――――――タァーーーン……!
今夜だけで3回も聞いた、あの狙撃音。
対象は誰だ、ちゃんとトロヤを狙っているのか?
ヴィオラも謎の多い人物だと称していたし、この局面で予想外の動きをされると困る。
「クラーラ!」
「待ってください。着弾しています。煙が徐々に晴れて……撃たれたのは――」
誰が撃たれた?不安だ、早く教えてくれ!
しかし、クラーラは屋上を見つめ、無言のまま双眼鏡を私に渡してきた。
視線は釘付けになっていてこちらを見ず、驚きで顔は固まり、瞬きもしていない。
(ちょっと……やめてよ、そういうの)
だが、見なくては始まらない。屋上で何が起きたのか――
「……クロさん」
「これ……えっ?」
「どう見えますか?」
どうもこうもない。だって、だって――!
「何も起こっていない……?」
フラヴィア以外、誰も倒れていない。
一菜も、アリーシャも、トロヤも。見える範囲では、フィオナも。
いくら銃弾がトロヤに効かなくても、あの狙撃手は銀弾を持っていた。トロヤに撃つならそれを使うだろう。
(――外した?あの狙撃手が、誰1人動いていない射撃を?)
ありえなくはない。
銀弾は軽いし、煙幕も晴れ切っていなかった。体温の低下で動きが鈍ったのも要因かもしれない。
「クロ移動するぞ、車に乗れ」
「え、えと。――はい」
ガイアが2爪キャリアーで木箱を運んできてくれた。
大きな疑問を残すが、もう1分経っている。移動した方が良いだろう。
私とクラーラは状況を把握できないまま、この場を後にする。
私達は大事なものを見落としていた事に気付かない。
見落としたんじゃない、見ていても気付かない。
だって、撃たれた者が無傷なハズがないと……
車は中継地点へと走り出した。
そこでダンテ先輩と合流し、二手に分かれる。
私とガイアの逃走班とダンテ先輩、パオラとクラーラの葬儀場班だ。
悪魔のゲームは今宵始まった。
悪魔の嗤い声が
悪魔の
悪魔の闇の翼は霧となって、闇の中に消えていき、その霧が晴れるころには――――
―――もう、だれもいなくなった。
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*あくまのげーむはこよいはじまった*
*あくまのわらいごえがこごえるほどにひえすみきったよぞらにひびきそのこうふんがほのおとなってもえあがる*
*あくまのまんげつのひとみがとらえているのはろーましないをすすむたったいちだいのくるまだけ*
*あくまのやみのつばさはきりとなってやみのなかにきえていきそのきりがふたたびあらわれるところには*
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*みつかったよ いそいで にげないと*
*さあ かのじょ が きたぞ*
クロガネノアミカ、読んでいただきありがとうございました。
ギャグ多めの回にしたつもりが、あれあれ?シリアスムードの方が時間長い?
とか、考えながら書いてました。
次に向けての準備、そして次回は……
チェイス戦、再挑戦です!
是非、ぐぐまーを使って展開を追って頂ければと。