まめの創作活動

創作したいだけ

黒金の戦姉妹おまけ5発目 黒き思いの心得たる千金条

どうも!


今回は質素2本立てのかかぽまめです。

クロとその戦姉妹であるチュラとの出会いの物語となります。
どうしても、シリアス展開になってしまうので、おまけなのに頭からっぽで読めません。


ではぁ!始まります。




おまけ5発目 黒き思いの心得たる千金条

 

 

「チュラ・ハポン・ロボ」

「はーい」

 

隣の席から、教室に間延びした声が響きもしない。

髪を揺らすことなく立ち上がった小柄な少女の発した音はとても指向性が良いらしく、その名を呼んだ講師までの一直線上にのみハッキリと聞こえている。

 

暗黄色の瞳は、返却される数学のテストがどれほど悲惨な物なのかを案じて、少しでも現実味を薄れさせようと、情報が映り込む表面積を上下の瞼を使い減らしている。

当然だが、それで結果が都合の良い様に映る訳でも、情けで呼び出しが無くなる訳でもない。

つまり、彼女には何の得もないのだ。

 

 

「…………」

「……また別途、再テストの連絡をするぞ」

「……はーい……」

 

 

周囲が「またかよ!」と笑って励まそうとするが、隣に戻ってきた彼女の瞳からは、光すらも消えていた。

ぶつぶつとうわごとの様に呟いている。

 

 

「チュ、チュラ様?」

 

 

さすがに不安になって声を掛けるも、現実から逃避しているのか、それとも現実から締め出されているのか、反応がない。

壊れたレコードが延々と同じ音を出し続けている。

 

 

戦姉おねえちゃんが試験官なら、戦姉おねえちゃんが試験官なら、戦姉おねえちゃんが試験官なら……」

「……」

 

 

(励まし方が分かりませんわ!)

 

かなり変わった方、という認識は誰に聞いても変わらないだろう。

 

 

 

 

 

 

チュラ・ハポン・ロボ

 

 

 ローマ武偵中1年、専攻は強襲科のEランクで、そのEランクの中でも最低レベルの実力者だ。銃の腕だけなら鑑識科の私の方がまだ良い成績だし、刀剣の扱いも探偵科のルーカ様の方が上だろう。

過去に1度、探偵科への転科を勧められたが、「チュラは武門の出なんだー」の一点張りで動こうとしない。

 

 出身地はスペイン。ローマに来るまでは銃に触れたことも無かったそうで、一般科目の成績も座学、実技共に最低ランク。教務科への呼び出し、再テストの常連であり、再々再々テストまで行った挙句におまけで合格になっている。

 

 周囲とのコミュニケーションは誰とでも無難にこなしていて、相槌をこまめに打つ聞き上手なわけでもなく、話し方が上手いわけでもないのになぜか会話が弾む。

恐らく、どんなにニッチな話題でも通じるからだろうが、傍から見ると話し相手が独り言をしているように見えなくもない。

会話の間中、ずっと相手の顔を見ているのは癖なのだろうが、男性相手には程々にすべきかと。

 

 ベージュ掛かったオレンジゴールドのショートヘアーで、暗い夜でもはっきりと見える暗黄色の瞳をしている。

 黒い手首までのグローブと、真っ黒なレギンス……見間違いでなければ、1度だけ漆黒のコートで外を歩いていたこともあった。

 

 使用武装はベレッタM92F。モノマネが得意だとの噂を聞いたことがあるが、詳細は不明。戦闘技能は無い……という評価が正しいのかは、私は疑問に思っている。

 

 というのも彼女は色々と有名な2年の先輩、強襲科に所属する遠山クロ様の戦妹であり、校内では一緒に行動をとっている姿が度々目撃されている。

クロ様と言えば、一躍有名となった「武偵高2年生の先輩を回し蹴りでワンキック事件」と「黒花の決闘」があったが、この子が原因だ。

 

 解決任務のほとんどが探偵学部インケスタのお手伝いであり、守秘義務と誤魔化しながら、怪しいくらい重宝されている気がする。

パトリツィアお姉さまも、彼女については良く知らないとはぐらかしてくるし、知らない方が良いのだろう。

強襲科での任務達成報告はされておらず、隠している様子でもないけれど……クロ様の相棒が何もしていないハズがない、きっと。

 

 

 

 

 

 

……こうして考え事をしている間も、ずっと唱えている。

余程クロ様に会いたいのか、その名前を口にしていて、「試験官なら」と言うのは小学生の授業参観の感覚なのだろう。

 

私はこの子が少し苦手だ。

何を考えているかではなく、が分からない。

 

性格の違いや国籍の違いではない。

クロ様にも感じた何か。

 

感じたままを率直に表すなら、『種族の違い』に近い。

 

多分2人はそういう所でんだろう。

 

 

「チュラ様、数学でしたら、再テストまでにお教えいたしますわ」

 

 

つい、そう持ち掛けてしまう。いつもの事だ。そしていつも断られる。

社交辞令のつもりはなく、純粋にそんな気分になっているから……認めたくはないが、私ものだと思う。

 

 

「ねぇ、アリーシャ」

「どういたしましたの?」

 

 

珍しい。

自分の世界からこうも早く立ち直ってくるとは。

 

 

「アリーシャは勉強の時、誰の顔を思い浮かべるのー?」

「顔……ですの?」

 

 

勉強と顔が結び付かない。

隠語なのかと考えてみても、聞いたこともないし、独自の解釈なのか。

 

返答は出来ないので、流れを汲んだまま、アドバイスをしておこう。

 

 

「勉強中は誰かとお話ししながらが良いと思いますわ。チュラ様が苦手なのは表現の方ですし、刺激が得られればガラリと変わるかもしれませんもの」

 

 

1つ断っておくと、これは数学の話であって、詩を書くテストでは無い。

 

ではなぜ、こんなアドバイスをしたか?

それはテスト用紙を見ればわかる。

 

彼女の数学のテスト用紙、解答欄は名前の欄も含めて全て空白で、点数は15点。

むしろ、テスト用紙の表側には何も記入されていない。問題は裏側にあるのだ。

 

 

「テスト中にお話ししちゃだめだよねー」

 

 

当たり前のことを言いながら、何も書かれていない表側をじっと見つめている。

本当に何を見ているんだろう。

 

 

「裏側を見せて頂いてもよろしいですか?」

「裏ー?別にいいけど、なんでー?」

 

 

普通のテスト用紙なら当然の反応だろう。でも彼女のものは違う。

 

裏返して、白紙のはずの面を確認すると……やはり、びっしりと、表側の問題がまるでコピーされたように丸々書き写されていて、名前欄にはしっかりと、『チュラ・ハポン・ロボ』と書き込まれている。

解答を導き出すスペースには三角形やら円やら双曲線やら、用途不明の図形が所狭しと並べられ、その横には驚くことに、導き出された答えに正解のチェックが付けられていた。

 

これに点数をつける講師も講師。表現の自由を認めるのは構わないが、暗号解読班にでも依頼したのだろうか?

残念ながら最初の3問を解いて時間切れになったようで、チェックは3つ。

解いた場所の割合だけで言えば100パーセント、普通にやればもっと点数が取れそうだ。

 

私には彼女に何かを教えることなど出来そうにない。

知っている事も、知らない事も、知りたい事も見当が付かない。

 

 

「ありがとうございました。お返しいたしますわ」

「うーん、どうしよー」

「困りましたわね」

戦姉おねえちゃんがいつも一緒ならなー」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

私は今、人生のピンチに立たされている。

 

目の前では1人の男子生徒が、熱心にド直球な告白をしてくれている所だ。

黒制服を着ているのはローマ武偵高の生徒の証。年上はどうにも苦手だよ。

 

(この人、強襲科の先輩だったよな~)

 

苦手な話は右から左へ、彼の視線が脚に移るたびに鳥肌が立つ。

 

綺麗な瞳も髪も全てを手に入れたいとか、見る度に美しくなるとか、君という天使と共に天界に戻るまで一緒に地上を歩みたいだとか、歯が浮くような言葉を恥ずかしげもなく繰り返してくる。

 

ついでにスキンシップを取ろうとするので、その度にごくごく自然な動きで躱さなければならない。

止めて欲しいが、転校して早々に派手にやらかすわけにはいかないので、大人しく諦めるのを待っていた。

 

 

しかし、待てど暮らせど彼のボキャブラリーは底なしの天井知らず。

私が余りにも乗ってこないので、逆に火がついてしまった感もしてきた。

 

 

「怖がらなくても良いんだよ?僕は君だけの味方さ!君が望むなら世界の中心に君を据えてみせよう!僕の中の世界と同じようにね」

「お構いなく、日本人は端っこが好きなので」

「ああ、それでも構わない。君という華を独り占めすることが出来るなら、それだけで僕の心は満たされている」

「は、はあ……」

 

 

(禅問答のプロだ!返答に一分の隙も無い)

 

かなりの強敵。

私でも知っているとなれば、それなりの注目株。能力も高いだろうし、はっ倒す以外に逃げ手がない。

 

まだ仲の良い知り合いは少ないので、頼れるのはパトリツィアくらいだが、彼女は探偵科のグループと街に出ると言っていた。

パオラはこういった場合には頼れないし、一菜が来たら場が荒れるだろう。私と一緒の時に男子生徒から話し掛けられると、男嫌いなのかって位、容赦なく追い払う傾向がある。

さらに、その後の1日はスキンシップの量が増え、体に不名誉な負傷が出来てしまうから、直して欲しいなあ。

 

(口調は直ってきたんだけど、性格がねぇ)

 

最近、日本語での一人称が『我』から『あたし』に変わった親友の事を思い浮かべると、顔が少しだけ笑顔になってしまっていた。

それを見逃さない先輩は、丁度話題に挙がっていた教会の絵画の話を深く掘り下げていくが、すみません、毛ほども興味ありません。

 

 

飽きて来た。

いや、とっくに飽きてた。

 

肩への3度目のスキンシップを図ろうとする左手を、くしゅんっ!とクシャミをして回避。

温かいカフェでも、じゃないんだよ。帰りたいんですよ。

 

 

ガサガサ……

 

 

近くの茂みが揺れた。

その不自然な揺れ方は、誰かが中にいるのだろう。

 

(むむ?もしや救世主様!)

 

2人の視線が茂みに集まる。

 

 

ガサガサ……

 

 

(な、なかなか出て来ない。服が引っ掛かってるのかな?)

 

そのまま待っていても良かったが、早くこの場を去りたいので、手を貸してあげる。

 

 

ヒョイっ

 

 

「おーっ?」

 

現れたのは小柄な少女。

パッと見のイメージは黄色で――いや、その……オーラなんて見えないが、黒い感じがしなくもない。間延びした声から、のんびりとした気性を想起した。

初等部の子ではなく、私と同じ武偵中の制服を着ている。

 

 

「おやおや、君はどこから入り込んだんだい?人払いはしていたハズなんだけど」

「……?」

 

 

(そんな事までしてたのか!)

 

道理で1人も通らないワケだ。

対する少女の反応は何の話?って感じ。そりゃそうだ、この子、全身余すとこなく草まみれで、ずっと茂みの中歩いてたみたいだもん。青臭い匂いが――?

 

――何の匂いだろう?おいしそうな匂いがする。この子の頭かな?

 

 

ピリピリピリ…

 

 

頭の奥がムズ痒いような、変な感じがする。

 

 

「あなた、人間?」

「"……はい?"」

 

 

考え事をしていたのもそうだが、唐突な問い掛けに面食らって、つい日本語で返してしまう。

人間じゃなかったら何なのさ!失礼しちゃう。

 

 

「そうですよ」

「そっかー」

 

 

悪気は無いんだろう、純粋に聞いてみただけらしく、すぐに顔を逸らした。

そこまで一気に興味を失わんでも。

 

ただ、先輩のプレッシャーに曝されながらもこの場から去ろうとしない、なかなか豪胆な性格も持ち合わせているようだ。

救世主ではなくて、迷子だったけど。

 

 

「すまないが、子供は外で遊ぼうか。ここは僕と彼女の愛で埋まってしまうからね?」

「埋まるのー?」

「うっ……」

 

 

過剰な表現で胸やけしそうだ。胃に穴が開くかも。

もう正当防衛が成り立つところまで来てるんじゃないのか?

 

(埋めてやりたい……あっ!)

 

良い事を思いついた。

 

 

「あなたは探偵科の任務の途中ですか?」

「?」

 

 

茂みの中を歩いて来るなんて、きっと落し物の類の捜索依頼だろう。

もしそうなら、彼女は探偵科。探偵科にパトリツィアという強力なコネがあれば、後から格安でアリバイ埋めを作ることも出来る。

 

今は適当な任務を言って彼女を連れたまま姿をくらまし、架空の仕事情報を流してもらえばいいや。

 

 

「チュラは探偵科の仕事、良くやってるよー」

 

 

ビンゴ!

 

 

「そうでした!今日は探偵科に仕事の依頼をしていたんです」

「えっ、そうなのかい?……でも、そうだね。仕事は大事だ、僕も手伝ってあげよう。報酬は君の愛――」

 

 

非常に申し訳ありませんが、敵の通信妨害により音声不明瞭。

繰り返さなくていいので、マイクをそっと手放して下さい。

 

 

「そんなに大きな仕事ではありませんから、どうぞ、お構いなく」

「大きな仕事じゃないって?そんなわけないだろう。だって僕の……」

 

 

非ッ常に申し訳ありませんが!回線がショートしてしまいました!

繰り返しても無駄なので!マイクの電源をお切り下さいッ!

 

 

「チュラ……さん、でいいんですね?パトリツィアさんはまだ街にいますか?」

Fiore di omicidio人喰花ッ?!」

 

 

(あ、そうか。強襲科の先輩の中にはパトリツィアの事を知っている人も多いもんね)

 

去年のパトリツィアの仮チームは強襲科アサルトの生徒3人、狙撃科スナイプの生徒1人、殲魔科カノッサの生徒1人の5人編成で、1年生の中でもBランク以上のトップクラスが揃っていた。

加えて頭がおかしい事に強襲科の3人は全員が別学科と掛け持ち状態で、探偵科インケスタ衛生科メディカ兵站学部車輛科ロジロジのスキルも備わる、言うなればバケモノの集まり。

 

当然宝導師マグドの担当も3人、強襲科・狙撃科・殲魔科の先輩が当てられていた。

しかし演習が始まって1週間経った時点で、5対3のチーム戦を制し、1ヶ月経つ頃には、担当していた強襲科Aランクの先輩が、1対1で完膚なきまでに叩きのめされた。

 

宝導師は更なる実力者が配属されたが、それでも彼女たちは超えてしまい、結局、Sランクの武偵2人を任務として雇ったことで、落ち着いていたとか。

…雇われたのは魔女だったって噂もあったし、武偵ですらなかった可能性もあるらしい。

 

全員が色とりどりの花の様であった事と、で敵対した相手を残酷なまでに喰らい尽くす様子から、『人喰花』と呼ばれていた。

 

 

まぁ、そんなやばいチームも事実上は解散している。

副リーダーが消えるように転校し、パトリツィアが怪我で抜け、殲魔科の生徒が地下教会の団体に先駆けでスカウトされ、リーダーは特務任務で旅立ったらしく、残り1人が単身でその名を背負っているそうだ。

 

 

「うん、戻ってないよー。いつもはチュラもお手伝いしてるんだー」

「え、そうなんですか?」

 

 

パトリツィアの仕事のお手伝い?落し物の捜索なんかうけるかなぁ?

言われてみれば、彼女が普段どんな任務を学校から受けているのか知らない。気になる。

 

 

「すみませんが、パトリツィアさんに会う予定がありますので、失礼します」

「そ、そうか。分かった、また今度お誘いするよ」

「はい、それでは。行きましょうチュラさん」

「??」

 

パトリツィアはそこに居なくても、名前だけで人払いが可能なのね。覚えとこう。

 

 

 

 

 

 

小さな子供を連れて、なんとか自由の身を手に入れた。

彼女にその気が無くとも感謝せねばなるまい。

 

そこで、騒音、異臭、破壊痕だらけの強襲科棟とは違い、落ち着いた雰囲気の探偵科棟に備えられた、古めかしいカフェテリアにお邪魔する。

前にパトリツィアに連れられて入ったが、店内は木製の家具で統一されていて、使われる木材は多種多様。かっきりした黒茶色から優しい胡桃色まで、塗装もせずにおしゃれ空間を作り出している。

壁の老朽化はこっちの方が進んでいるが、それは強襲科が優先されているのではなく、ここは張り変える必要がないというだけだ。

 

今の時間、わざわざここで休憩する生徒は少なく空席だらけ。

どこでも選び放題なら隅っこを取るというのは、情報のやり取りをする探偵科の生徒達も同じ考えの様だった。

 

 

カプチーノでいいですか?それとも甘いものは苦手でしょうか」

「チュラはここの"緑茶"がおいしいー」

「"りょ、緑茶!?"」

「"そう、緑茶ー"」

 

 

あった、なんでそんなメニューが…

 

 

「"チュラが頼んだのー"」

「"へー、そうなんですか。これって日本のお茶なんですよ、日本語では……あれ?"」

 

 

(おかしいな、緑茶って既に日本語じゃない?)

 

 

「"ねえ、あなたはチュラの敵?味方?"」

「"り、両極端ですね。敵ではないですから、味方ですよ"」

「"そっかー"」

 

 

今度は一連の会話で興味が無くなったわけではないのか、目を離そうとしない。

顔を見られているだけなのに、少し怖くなって顔を逸らす。

 

(この子と一緒にいるのも疲れそう。早めに切り上げようかな)

 

緑茶を2杯頼み、席へと向かう。その道中も見られている気がして右を向くが、こちらは見ておらず、彼女も右を向いていた。

 

(気のせい、だったか)

 

スイッチOFFの状態ではどうにも勘が鈍る。

まだ見られているような……

 

 

丸くて小さいテーブルで緑茶を飲んでいると、うわぁ、先生が入ってきた。

キョロキョロと見回し、こちらに目を付けると真っすぐやってくる。

 

(わ、悪いことはしてませんよ)

 

ついソッポを向いてしまう自分が恨めしい。まるで私が教務科にマークされている問題児みたいじゃないか。

心配だったが、私は無関係だったようで、スラリとした体型の男性は、テーブルの前に立ち止まってチュラの肩を叩く。

 

 

「チュラ、強襲科1年の再講習はどうした?」

「もう、終わったよー」

 

予想通り、男性は穏やかな雰囲気ではない。

彼の言い方は、なぜ事後報告をしないのかと部下を怒鳴る上司のようだった。

 

(中等部1年の授業で再講習?)

 

それって、銃の簡易分解が出来ないとか、発砲の姿勢が取れないとかそんなレベルじゃないか?

いやいや、それ以前に強襲科だったの!?なんでここに馴染んでるのさ!

 

彼女が探偵科でないなら、私達ってただのお茶飲みに来た無関係者、不審者じゃん!

 

 

「終わったら教務科に顔を出せと言ってあっただろう」

「……誰の顔も思い浮かばなかったんだもん……」

 

 

俯いて落ち込んでいるようだ。

こっちは無関係者ではないので、助け船を出しておこう。実際助けられたようなものだし。

 

 

「先生、実は私が彼女に探偵科棟まで案内してもらっていたんです」

「君は……ああ、最近日本から来た生徒か。それなら探偵科の生徒に頼みなさい」

 

 

はい、そうでした。この子違うんでした。

 

撃沈。スイッチの入っていない状態では、口頭でのバトルが3秒であしらわれた。

 

 

「違うよ。チュラが探してたの」

「チュラ、まだそんな事を言っているのか?君の相棒はもう見つかっただろう」

「あの人は違うもん!」

 

 

(あれれー?また場が荒れてきた。完全に蚊帳の外なんですけど)

 

私のせいで怒られているのかもしれないが、さっき以上のフォローは出来ない役立たずなので、成り行きをこっそり見まも――

 

 

「チュラッ!」

「いや!」

 

 

――はしっ!

 

 

腕を掴まれガッチリ抱かれる。

 

(ああ、そんな気はしてた。私の周りには変な子しか集まらないもんね)

 

この件は単純じゃないんでしょ?

先生の顔にそう書いてありますし、少女を連れて行こうとするのにも必死さがある。

わざわざ先生自身が探しに来たのも、裏があるかもしれない。

 

 

 

 

――こっそりと……スイッチを入れた。

 

 

 

 

「先生、チュラの相棒というのは?」

「関係のない話だ、忘れた方が良い。そうすべきだ」

「そういうわけには行きません」

「なぜだ?」

 

 

緊張が訪れる。

私の雰囲気の変化を感じ取ってか、警戒している様子だ。

しかし、それよりも少女の反応が気になる。

さっきからずっと、腕を掴んで私の顔を見ていただけだったのに、その手を放して距離を取り、全身を観察し始めたのだ。

 

じっ……っと。何を見ているかは分からないが、癖や呼吸とまばたきの頻度のみならず、筋肉の収縮や血流の流れまでも把握されている気がする。

 

良く見る奴は強い、常識だ……たぶん。

 

 

「私は彼女と組みたいのです。相棒がいないならこの場で申請するつもりでした」

「……庇った所で、良い事は何もないぞ?」

「何のことでしょうか。……ですが私も目立ちたくありません。仮に、ですよ先生?彼女に相棒がいたとしたら、喧伝してでも探してしまうかもしれません。その時、口が滑って彼女の『力』について漏らしてしまうかも」

「おい」

 

 

(なるほど、適当に言ってみたものの、そこまで的外れではないのか)

 

こうなったら、ただのお茶目心でした、では済まされない。

ちらっと、件の少女の様子を窺う。あとは彼女の意見次第だ。

無理矢理手を貸したんじゃ、学校側と何も変わらないからね。

 

少女は観察を終了し、視線が私と先生を交互に行き来している。

5度繰り返した後、その暗黄色の瞳の先には私が映っていた。

 

 

「チュラもあなたと組みたい」

 

 

許可を、頂けたね。

なら、もう予定は決まったよ。

 

 

「先生、向上心のある生徒からの質問です」

「……」

 

 

黙るなら、希望はあると考えていい。

条件次第ではパートナーを変えられる可能性が。

 

 

「お話をしましょう。5人で」

 

 

 

 

 

 






クロガネノアミカ、読んでいただきありがとうございました。


チュラについては、クロもあまり理解していません。変わった子、モノマネが上手い、能力者である、いい匂いがする。それぐらいしか知らないんです。